Journal d'un lecteur

フランス語での読書記録です。

三冊目:Eiichiro Oda "ONE PIECE" tome 1

三冊目は漫画にチャレンジしてみました。

尾田栄一郎のワンピースの第1巻です。ワンピースはフランスでも大人気で、漫画はもちろん翻訳されていますし、アニメ・映画の方も日本に少し遅れる形で放送されています。ワンピースを専門にしたフランス人youtuberもいるくらいです。

 

今回はフランス語版ワンピースがどんな感じか見ていきたいと思います。

まず最初に、なんで今この漫画のフランス語版を手に取ったかというと、ルフィの有名な決め台詞「海賊王に俺はなる!(どーん)」の部分がどんなフランス語になっているか気になったからです。

 

ちょっと考えてみると、

Je vais devenir le roi des pirates.

もしくは

Je serais le roi des pirates. 

あるいは

Je deviens le roi des pirates.

みたいな感じになるのかなと思い、いやもしかしたらroiじゃなくてseigneurもあり得るなと、考え出したら気になってしょうがなくなってしまい、ネットで注文してしまいました。

 

さてさて、この「海賊王におれはなる!(どーん)」というセリフは第1話の最後の一コマで出てきます。

ルフィはフランス語でなんと言っているかというと、

"Je vais devenir le roi des pirates! (WAAAM)"

でした。

カッコ内のWAAAMは効果音の「どーん」です。

 

実は、このコマの前にも、子供時代のルフィがシャンクスに向かってほとんど同じセリフを言っております。

「お前なんかが海賊になれるか」とシャンクスにからかわれたルフィは、

「なる」、「おれはいつかこの一味にも負けない仲間を集めて」、「世界一の財宝を見つけて」、「海賊王になってやる」と言っています。

 

この部分はフランス語でどうなっているかというと、

Shanks " Tu crois vraiment que tu peux devenir pirate? c'te bonne blague!"

Luffy " Bien sûr que je peux!

           Un jour je réunirai un équipage aussi fort que le votre et...

           Je raflerai tous les trésors du monde sous votre nez!

           Je serai le seigneur de tous les pirates!

と訳されていました。

 

その後もルフィの台詞の中でちょくちょく「海賊王」という言葉が出てくるのですが、

これらはすべてseigneur des piratesと訳されていました。

海賊王の部分はroi des piratesもしくはseigneur des piratesのどちらも使えるようです。

 

まだ一巻しか読んでいないのでわかりませんが、感覚としては、「海賊王におれはなる!」と決め台詞的にいう場合にはroi des piratesを使い、「海賊王」とだけ台詞の中で出てきた場合にはseigneur des piratesを使っているような気がします。

 

気になったのでさらにアニメのフランス語版を調べてみました。

ちょうどこの「海賊王におれはなる!」というセリフのみを編集した動画があったのでそちらをご覧ください。

 


one piece - je serai le roi des pirates

 

やっぱり、roi des piratesが使われていますね。seigneurは使われていません。ここまで来てroiとseigneurって意味的に違いがあるのか気になりました。今まではほとんど同じ意味で使われているかと思っていましたが、もしかしたら使い分けがあるのかもしれません。

 

フランス人に聞いてみたら、ちょっと考え込んだ後に、ほとんど同じ意味だよという答えが返ってきました。ただ、なぜ同じか理由を説明するのは難しいみたいです。若干違いもあるようですが、やはり、どう違うのかもなかなか説明しづらいようでした。

 

というわけで、手持ちの辞書Larousseで調べてみました。

roi : 1. Détenteur du pouvoir exécutif das un État monarchique

       2. Le plus grand dans un domaine particulier, celui qui domine

とありました。1は「君主国において政治を執り行う力を持つ者」という意味なので「王」のことです。2は「ある特定の分野において最も力を持つ者、支配する者」となります。

ルイ13世とかアンリ4世とかが1番の意味のroiになりますね。

ワンピースに出てくるroi des piratesは2番の意味で使われています。例えば他にもこんなフレーズをよく使うかと思います。

Le lion est un roi des animaux. 「ライオンは百獣の王である」

ちなみに「ライオンキング」のフランス語番のタイトルは"Le Roi Lion"です。

 

次にseigneurの方を見てみましょう。

1. Au moyen âge, posseseuer d'un fief, d'une terre importante

2. Sous l'Anicen Régime, personne de la noblesse

Le Seigneur : Dieu

となっていました。

1は「中世における封地、広大な領土の所有者」つまり封建領主のことです。

2は「アンシャンレジームにおける高貴な人物」つまり貴族のことで、最後に大文字でSeigneurとある場合は神のことを指すとあります。

ロードオブザリング」はフランス語では"Seigneur des Anneaux"となります。タイトルなので大文字になっているだけで神という意味のSeigneurではありません。

 

歴史的な内容の場合、roiとseigneurはそれぞれが王と領主で意味が異なるので明確に使い分けられていると思いますが、それ以外の場面ではほぼ同じような意味で使われているのではないでしょうか。

 

話がマニアックな方にそれてしまいました。。。

フランス語版ワンピースの話に戻りましょう。

 

あまりよろしくない言葉ですが、漫画を読んでいると「死ねー」とか「ぶっ殺す」なんて表現がよく出てきますね。こういう表現がフランス語でどうなっているのか学べるのも漫画の良いところだと思います。使う機会はないかもしれませんが見てみましょう。

tuerとかmourirが使われているかと思いきや、意外にも漫画を読んでいてこれらの言葉に出くわすことは少ない気がします。

その代わりに、faire la peauという表現が頻繁に使われています。話し言葉で「殺す」という意味です。

ワンピースの1巻ではモーガン大佐が

Je vais lui faire la peau!

と叫んでいます。「そいつをぶっ殺してやる」という意味です。

同じ意味でavoir la peauという表現もあります。

 

そのうちこのブログにも登場すると思いますが「僕のヒーローアカデミア」(フランス版のタイトルは英語でMy Hero Academia)でもこの表現はたくさん使われていました。(特に爆轟の台詞で)

 

他にも「るろうに剣心」の映画をフランス語の吹き替えで見ていたら、「死ね」という意味で、Tu vas mourir!と言っていました。ちなみに「るろうに剣心」はフランス語では"Kenshin le vagabond"というタイトルで知られています。

 

漫画は俗語の宝庫ですので、普段文学作品を読んでいるだけでは出会うことのない表現をたくさん学べます。すらっと読めてしまうし、何度も繰り返し読んでるうちにこうした表現が次第に身についてくると思います。

フランス語の漫画は日本で買うと一冊1000円以上はするので、少し割高な感じもしますが、教科書や学校では学べない砕けた感じのフランス語を勉強できると思うと安いと思います。

フランスでの漫画人気は本当にすごいので、こんなマイナーな作品まで翻訳されてるんか、とびっくりするくらいです。少年漫画や青年漫画、オタク系の萌え漫画が特に翻訳されています。反対に少女漫画は日本で大ヒットした作品でもあまり翻訳されていない気がします。恋愛観があまりにも違いすぎるのでフランスでは受けないのでしょうか?フランスでは女の子もナルトとかワンピースみたいな少年マンガを好んで読んでいる気がします。

ジャンプ系の漫画は人気のものはほぼ翻訳されています。ベルばらなど古い漫画も出版されていますし、百合・やおい・BLを専門にした出版社もあります。フランス人の漫画熱恐るべし。

皆さんも好きな漫画をぜひフランス語で読んでみてください。