Journal d'un lecteur

フランス語での読書記録です。

一冊目:Jeunet-Laurant "Le Fabuleux Destin d'Amélie Poulin"

初めまして。

Journal d'un lecteur(ある読書家の日記)というブログを始めて最初の記事になります。

記念すべき最初の記事ということで、僕の大好きな作品「アメリ」を取り上げてみたいと思います。

中学生の時に初めて観て、フランスを好きになるきっかけとなった作品です。

映画のシナリオなので、映画を見たことがある人なら意外とすんなりと読めてしまうと思います。映画をご覧になった方は多いと思いますが、実はシナリオも日本で手に入れることができるんです。都内だと新宿のBooks Kinokuniya Tokyoか飯田橋の欧明社に置いてあります。残念ながらこのシナリオの日本語訳は出ておりませんが、映画の字幕を参照にすれば問題ありません。

 

アメリについては、今更説明も必要ないかもしれませんが、念のため少し詳細をお話ししておきます。

アメリは2001年に公開されたフランス映画で、フランスや日本をはじめ、世界各国で大ヒットを記録した映画です。私のように、この映画がきっかけでフランス語を勉強し始めた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

映画の原題はLe Fabuleux Destin d'Amélie Poulainで直訳すると「アメリ・プーランの驚きの運命」というような感じになります。Fabuleuxはあまり見慣れない単語で日本語に訳すのが少し難しいですが、étonnant(驚くべき)、extraordinaire(普通でない)、imaginaire (想像上の)、mythique(神話・架空の)といった言葉が合わさったニュアンスがあります。映画の中のアメリの人生を思うと、fabuleuxというのはとてもぴったりな言葉だと思います。

 

監督はフランス人のジャン・ピエール=ジュネ(1953−)。1980年代から友人のマルク・キャロと共に短編映画を取り始めています。アメリを撮った時にはすでに20年近くのキャリアがあったのですね。アメリの前にはハリウッドでエイリアン4を撮ったりもしています。ちょっと意外でした。ちなみにこの時ハリウッドでいざこざがあり、ジュネはフランスに戻る決意をしたそうです。

 

ジュネとキャロのコンビで撮影した映画では「デリカテッセン(1991)」や「ロスト・チルドレン(1995)」が有名で、DVDも入手しやすいです。アメリと俳優陣がかぶっていたりするので面白いです。どちらもブラックユーモアはアメリよりもドギツイですが。。。

僕はジュネとキャロのコンビの映画が好きなのですが、残念なことに、上記の二作以外は日本ではほとんど観る機会のない作品です。DVDも一応出てはいるのですが廃盤でプレミアが付いてしまっています。

Foutaisesという作品はYoutubeにアップされているので見ることができます(日本語字幕はなし)。アメリでストーカー男を演じたドミニク・ピニョンが主役の短編です。DVDでは「僕の好きなこと、嫌いなこと」という邦題がついています。邦題を見て、これはと思った方もいると思います。そうです。アメリの冒頭で、登場人物の好きなこと、嫌いなことが語られますが、あれと同じ形式で、主人公がひたすら好きなこと嫌いなことを語っていくという映画です。アメリの原型のような作品なので、ぜひ見てみてください。

 


Foutaises (Jean-Pierre JEUNET)

 

ところで、ジュネはアメリの撮影の際には長年コンビを組んだキャロとの関係を解消してしまっています(どういう経緯なのかは不明)。代わりにジュネと仕事をすることとなったのが、ギヨーム・ローランという脚本家です。実は映画の中のセリフは彼が書いています。ジュネとローランの出会いについても、面白いエピソードがあるのですが、それは今回取り上げるシナリオに収録されている監督インタビューを読んでからの楽しみに取っておいてください。アメリには印象的なセリフがたくさん出てきますが、それはローランの仕事だったのですね。ちなみにローランはアメリ以降のジュネの作品には全て参加しています。

 

さてさて、シナリオの内容の方ですが、会話の部分に限って言えばそれほど難しくはないテキストだと思います。やはり、会話なので俗語表現が多く、慣れるまでは大変かと思いますが、そこは、映画の場面や字幕を思い出しながら十分カバーできると思います。

ちなみに、僕の感覚ですが、このシナリオの会話の部分、実際のフランス人の日常会話にかなり近い物だと思っています。アメリがキオスクのおばちゃんと話をしている場面を見てみましょう。

 

Marchande :

Et lui alors, toujours à courir après Gina?

 

Amélie :

Non...maintenaint il s'intéresse à quelqu'un d'autre. (regarde son journal) C'est drôle, cette histoire de glacier.

 

Marchande (restant sur son idée) :

Dites-moi...c'est quelqu'un que je connais?

 

Amélie :

Oui. (montrant l'article au sujet du sac postal) Vous croyez qu'ils vont faire suivre le courrier?

 

Marchande

C'est quelqu'un du <Tout va mieux>?

 

Amélie :

Hum hum.

 

Marchande : 

Pas vous, quand même?

 

Amélie :

Non.

 

Marchande :

C'est pas Mme Suzanne...Noooon!

 

Amélie :

Si.

 

 

セリフの途中に入っている括弧は登場人物の動きを表す部分なので無視して大丈夫です。courrier (m) [郵便物]という単語がなかなか見慣れないかなというぐらいで、あとはフランス語を学習してすぐにならう単語ばかりですね。映画を観たことのある方なら場面を想像しながら読めるし、字幕がどんな感じかなんとなく思い出しながら読んでいくと意外にもすんなり進んでしまいます。

 

フランスに旅行をした方ならこういった場面に一度は遭遇したことがあるのではないでしょうか?

レジに並んでいたら、前のお客さんがレジ係と長話を始めてしまったり、ショコラティエに入ったら店員さんは常連さんと話し込んでて、こっちの相手をしてくれなかったり。そういう時の会話に耳をすませてみると、だいたいアメリとおばちゃんの会話みたいな感じだったりします。最近はフランスもお年寄りが多いので、恋話よりも病気の話をよく聞きました笑。こうした映画の進行とは直接関係のないような会話の部分、フランス人が普段喋っているフランス語がそのまま出てきています。

 

あっ、ちなみに引用した部分に出てきた、<Tout va mieux>の部分は、アメリが働いているカフェの名前です。映画とは違っていますね。シナリオを細かく読んでいくと、セリフが違っていたり、映画にはない場面があったり、アメリマニアにはたまらない発見がたくさんあります。

 

アメリマニアにたまらない点では、もう一つ、シナリオの最後に監督のインタビューが載っています。制作の裏話が満載で、必読です。こちらの内容もそれほど難しくはないです。仏検二級くらいのレベルでしょうか?(受けたのがだいぶ前なのであまり参考にならないですが)

 

引用した部分の表現について細かく説明していくこともしたいですが、

あんまり長くなりすぎてしまうので、また機会があったらにしておきます。

 

では最後に、アメリの中でも特に印象的なあのセリフ、フランス語では一体どういうのか引用してみましょう。売れない作家イポリットの小説の中の一節です。

 

"Sans toi, les émotions d'aujourd'hui ne seraient que la peau morte des émotions d'autrefois."

 

日本語の字幕では、「君がいないと僕の心は空っぽ、愛の抜け殻になってしまう」となっていましたね。とても綺麗な翻訳だと思います。でも原文を読んでみると少し意味が違っていることにも気づきますね。それではこの記事を読んでいただいた後の勉強に、この部分の訳、皆さんならどうするか、少し考えてみてください。

 

それでは、二冊目の記事を更新した際もよろしくお願いします。